第六話『不安』
ダンスダイナマイト2000の決勝大会はトーナメント戦だった。 三回勝たなくては優勝できない! いや、それ以前に、一回戦で負けるかもしれないのに、三回戦分作らなければならないのが大変だ! 負けることなんて考えずに、迷いもなく三作品の練習に取りかかれるチームもいただろうが、僕の心はそんなにタフではなかった。
それに、負けることはとても怖かった。
怖いと思った理由は、『負けたらかっこ悪い!』という感情もあったが、それだけではなかった。 チームメイトの膨大な時間を無駄にしてしまうのが怖かった。
…いや、正確に言うと、メンバーに嫌われるのが怖かった…。
自分たちのやりたいスタイルを一作に凝縮して、やりたいダンスをやり抜いて負けるなら納得出来るかもしれない。でもそれが、三作品作っても一作しか出せなかったら…? 予選一位という結果も、自分にはプレッシャーになっていた。 チーム全体が同じ気持ちだったに違いない。
ただでさえ、愛知と東京ていうことで練習が難しく、一曲作るだけでも二カ月はかかるのに、決勝まで二カ月ちょいで三作品を作り込み、そして踊り込む…。
とても不安だった。
僕はとことんテンションが落ちまくっていた。
…が、実は決勝のトーナメント表が発表された時点で、僕は三作品の輪郭はかなりハッキリとイメージ出来ていた。しかも、作戦も組み立てていて、決勝トーナメントで勝ち進む自信は既にあった。
…じゃ、なんで不安になるの? と思う人もいるかもしれない。
理由はさっきも書いた通りだ。 みんなに負担をかけることで、みんなに嫌われるのが怖かった。 僕にとって、チームメイトはとてつもなく大きな存在だったから。 …でも、その気持ちがマイナスに働くことを僕はまだ気付けていなかった。
続
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